朝倉市のチャレンジ大学で2017年9月30日にお話をさせていただいた資料を添付します。
以下の文章は、災害が起こった直後に書いたものです。
2017年7月5日北部九州豪雨被害(速報)
1. はじめに
2017年7月5日、福岡県の朝倉市および大分県の日田市一帯に線状降水帯が発生・停滞し、おびただしい豪雨をもたらし、甚大な被害が発生した。速報段階であるが、被害の概況を報告する。なお使用した地図は地理院地図に書き込んだものである。
2. 降雨の状況
7月5日、お昼前から降り出した降雨は正午過ぎから猛烈な雨となった。福岡管区気象台は午後13:14分大雨警報を発令したが、朝倉観測所ではすでに1時間に100mm近い雨が降っていた。その後、朝倉の最大の1時間降水量は129mmに、山間部の黒川ではさらに猛烈な雨で約9時間で約800mmというすさまじい豪雨が観測され、大きな災害に至った。豪雨の範囲は集中していた。
< >被害の概況被害の概況を図に示した。
降雨が集中した広蔵山(ひろぞうやま)を源流に持つ筑後川より北側の支川が軒並み大きな被害を受けた。
地形条件により被害の様相は異なる。西側に位置する桂川、荷原川(いないばるがわ)、妙見川では堤防が破堤しその下流で、氾濫原への氾濫が広がった。筑後川が形成した自然堤防地帯であるため、住宅は自然堤防上(氾濫原の微高地、1m程度の高さ)にあるため、床下浸水が中心である。
一方、広蔵山周辺の山地では3000か所ともいわれる崩壊が発生し、谷底平野の集落は土砂による埋没、流木による破壊などにより大きな被害が発生した。山地崩壊により発生した流木の数は甚大で、今回の災害を特徴づけている。
赤谷川や白谷川の下流は扇状地となっており、元の流路が埋まり、新しい流路が出来るなど地形の改変を伴う大規模な洪水となった。上流から流下する流木によって多数の橋で閉塞が起こり、小河川がせき止められ、そこから横方向に氾濫することにより被害が拡大した。
また奈良ケ谷川では、ため池が決壊し、下流に大きな被害をもたらした。
位置① 桂川下流(朝倉市四郎丸)氾濫流の痕跡
筑後川の旧河道である桂川周辺の氾濫状況を視察した。上流の破堤地点からの越流水(想定)が低地(後背湿地)に沿って流下したことによる氾濫である。家屋は自然堤防上にあり、床下浸水が中心であるが一部に床上浸水の家屋もある。浸水面積は大きい。
位置② 荷原川(いないばるがわ)堤防決壊現場
左右岸が決壊しているが、右岸側は高いため、左岸側に主に氾濫している。すでに応急復旧工事が行われている。
位置③ 荷原川 橋梁流失現場
樹木が橋を閉塞し両岸に氾濫が発生している。橋梁も破壊されている。
位置④ 桂川(朝倉市三奈木六本松)
下流に見える橋より上流で、溢水氾濫。河岸が大きく侵食している。
位置⑤奈良ケ谷川 ため池決壊現場
奈良ケ谷川の上流のため池の決壊現場。地元の人の話によると、余水吐きに流木がひっかかったことにより、ため池の水位が上昇し破堤に至ったそうである。下流のため池は破堤していない。下流ため池より下流まで氾濫がおよび、甚大な被害をもたらした。
下の写真は山の上からとった。堤防が決壊したのがわかる。水が溜まっていない。
決壊部を近くから撮った写真。
位置⑥ 奈良谷川(山田地区)流木多数
ため池決壊部の下流の国道に堆積した多数の流木。下流のため池を通過した、破堤氾濫水と樹木、泥は大きな被害をもたらした。
赤谷川上流部の山地崩壊の様子
いたるところで山地崩壊が発生し、大量の土砂と流木が谷に流れ込んだ。この写真は赤谷川支流の乙石川の上流の状況。
位置⑦ 赤谷川 大規模地形改変
杷木地区の北川、寒水川、白木谷川、赤谷川は至る所で斜面崩壊が発生し、多量の土砂発生し、それらが谷を埋め、扇状地性地形の場所にまで影響を与え大規模な地形変形をもたらした。
特に赤谷川下流の林田地区は川幅は大幅に拡大し、橋梁に流木が詰まり、流路を変えた。家屋等の被害も甚大である。
下の写真は、もとは畑だったところ。広大な川となった。
旧河道部。この木が右岸側の川沿いに立っていた木。奥に橋が見えるが、河道は埋没してしまっている。上流方向を見ている写真。
大量の流木が堆積している。破壊された家屋も多くみられる。
橋梁上流部に大量の流木が閉塞している。
地点⑧
花月川(日田市小野地区)大規模斜面崩壊現場
大規模な斜面崩壊により河川が閉塞した。応急復旧により、河道の閉塞は解消されたが大きな被害を出した。下流からの写真。崩壊形態については、現場に近づけないため明らかにされていない。