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地域で何らかの社会的な活動を行おうとするときには、地域の中に主体的な活動母体が形成されることが重要である。
また、合意形成の場面でもいくつかのポイントがある。
ここでは、いままで私が関係したアザメの瀬自然再生、トキ研究、樋井川流域治水、上西郷川、川内川水害復旧、五ヶ瀬町などの経験に基づいた主体生成・合意形成に関する語録や勘所を紹介する。(東京工業大学の桑子語録を含んでいます)
合意形成の勘所
  • なるだけ早い段階からの合意形成
    計画の初期の段階から合意を形成する。聞いていないという話が一番話を難しくする。

  • 創造的プロセス
    色々な立場の人が集まって物事をディスカッションして合意を形成するということは、ただ意見がまとまるという過程だけではなく、その中で新しいものが生まれます。合意形成を創造的プロセスとしてとらえることが非常に大切である。

  • 合意は形成されるという楽観
    合意形成に臨む場合重要な心構えは、合意は必ず形成されるという楽観である。不安は不安を呼ぶ。不安は伝染するので、主催者側はあわてないこと。

  • 柔軟な対処
    合意形成でもっとも重要かも。場面場面に合わせて、コーディネーターや行政は柔軟なことが合意形成の早道。これはできません、あれはできませんでは話は進まない。住民側にも柔軟性があると合意形成は早いが、もめている場面では、住民に柔軟性を求めるのは難しい

  • ​受容
    コーディネーターは、いろいろな人の発言をいったん受け止める。「なるほど」「あーそうですね」「そういう意見もありますね」。社会にはいろいろな意見がある。そのような意見を受け止めてこそ、コーディネーターは信用され、会は円滑に進む。

  • 山誉め
    志賀島の志賀海神社では山誉め祭りが行われる。山を三度誉める。「あーらいい山しげった山   あーらいい山しげったった山 あーらいい山しげった山」。海の民が山を誉める。なんと素晴らしいことだろう。昔の人は山から海への水の流れを感じ取っていたのだろうか?またこの「誉める」ということが素晴らしいではないか・・といたく感激した。感動したら素直に誉める。誉める心を持てば、主体生成へとつながる。地域づくりには誉めるということ、感謝することは重要なポイントである。

  • 合意点まで戻る
    会合やワークショップで異なる意見が出て、対立のような構図ができたとき、コーディネーターのあなたははどうする?私が心がけているのは、合意したポイントまで戻ること。そうすることによって、同じ思いで進めており、意見が異なるのは部分であることをいることを確認する。相違点を強調するのではなく、共通点を強調する。

  • 場の設計
    合意形成の場面では話しやすい雰囲気を作ることが重要である。席の配置で雰囲気は随分と変わる。教室形式の並べ方は説明会に向いている。車座方式はワークショップに向いている。明るい雰囲気の部屋、ちょっとしたお菓子なども重要である。  

  • みんなの意見
    ワークショップの運営をうまくやらないと、特定の人の意見だけになってしまうことがある。みんなの意見を聞くためにはポストイットなどを利用し、すべての人の意見を聞くことができる工夫や特定の人だけが発言するときにそれを上手に遮るコーディネーターの力量が必要である。「ほかの方の意見も聞いてみましょう」などのフレーズが重要です。

  • 文句や批難は続かない
    合意形成の話し合いを始めると、最初のうちは行政批判が怒涛のごとく出てくることがある。それでも我慢して回数を重ねることが重要。文句や避難は3回目ぐらいがせいぜいで長くは続かない。いつも同じ文句を言う人は愚か者とみんなに思われる。打たれ強い精神と我慢が肝要。

  • 人間に対する信頼
    基本的に人を信頼すること。人を疑うと疑われる。思いは伝染する。言動は信用しなくとも、人を信頼すること。

  • 余韻を残す
    ​話し合いは1回、1回完結する必要はない。余韻を残しながら終わるということも重要である。え、こんな短くて終わるの、というようなタイミングで終わることも効果的である。時間をおいて考える時間があることも重要。1回のワークショップや話し合いを詰め込みすぎないようにすることがコツ。

  • 人は変わるから素晴らしい
    人は自分の考えを柔軟に変えることができる動物である。だからこそ、人と人との議論が成り立つし、合意が形成される。話し合いが硬直した時に使うと有効な言葉。いろいろな合意形成、主体生成の場面に立ち会ってきたが、しばしば人は大きく変わるのを見てきた。人が変わるときに全体の流れも変わっていく。「人は変わるから素晴らしい」という言葉が素晴らしい。これも桑子語録。

  • 「してくれ」ではなく「しよう」
    合意形成の場面で住民から行政側に対してしばしば出てくる「してくれ」という言葉。ある意味で当事者ではないというサイン。繰り返し「してくれ」ではなく「しよう」と言うことにより主体が生成されるかも。重要な言葉である。

  • ドラゴンボール型合意形成
    合意形成の場面にはかならず意見の異なる人に入ってもらうことが重要であり、その人たちが味方になっていくプロセスが合意形成にとって重要なことをマンガのドラゴンボールにたとえた。ドラゴンボールでは敵だった宇宙人が戦いのの後に仲間になっていく。日本の漫画は敵が死なないんだという、感想とともに、合意形成の本質をとらえていることに感心。最初から、反対する人を排除した場では、合意形成の意味がない。自分も変わり、人も変わっていくプロセスこそ、合意形成過程の醍醐味。

  •  「合意形成をしない」という合意形成
    合意形成というとすべてのことを話し合いで決めなければいけないと思っている人もいるかもしれないが、けっしてそんなことはない。この部分はこのデザイナーに任せてしまう、という合意を図らないという合意をとることも、一つの合意形成である。

     

​ここからは主体形成のポイントです。

  • 7人の侍
    物事を始める時には仲間集めが重要だというたとえ。東京工業大学桑子敏雄先生の言葉(以下、桑子語録とよぶ)である。桑子先生曰く、「黒澤明監督の映画、7人の侍を見なさい。7人の侍は人集めが映画の時間の半分を割いている。コアメンバーを集めることが重要である。」。逆に言うと7人集まれば何でもできるということ。ただし、7人の侍すなわちコアメンバーは人柄が信頼でき、私心がないことがことのほか重要である。性別、年齢などもばらついている方が良い。コアメンバーでプロジェクトの基本的な戦略を練る。コアメンバー以外に支援メンバーになっていただく方も重要である。  

  • 人脈は逃すな
    「そういう人がいたからできたんだよね」ということをよく聞くが、それは逆である。そういう人を逃さなかったからこそ、できたのである。人脈は宝であり、人脈は見つけなければならない。たどり探し、逃さない。これは、地域づくりの基本である。

  • 国生み
    主体が生成する様の形容。国生み神話と主体生成される様がよく似ていることから名づけたもの。以下桑子先生メールより引用  国生み神話では、 天つ神ご一同様、イザナギノミコトとイザナミノミコトに 「この方向性もなく漂ってガタガタの国を 修理してかためなさい」 とおっしゃり、玉で飾った天の沼矛を賜ってご委任された。 そこで、二柱の神は、天の浮き橋にお立ちになり、その沼矛を下界に下ろしてお描きになったところ 海水をコヲロコヲロとかき鳴らして引き上げになったときに島になった。 主体が形成される前には、これまでの関係がいったん融解し、どろどろと混沌とし、そこにエネルギーが注入されることにより、徐々に関係が再構築され主体が生成される。国生み神話とよく似ている。

  • 主体形成のビッグバン:宇宙誕生が高密度、高温度のところが大爆発によって生まれたとされる。この大爆発をビッグバンと呼ぶが、主体が生成される過程もよく似ていて、密度が高まってきてあるときにはじけて、主体が生成されていく様。

  • 中心のない組織
    プロジェクトを推進するときには、さまざまな団体が協力して行うことがほとんどである。とくに大きなプロジェクトの場合には団体や個人が横断的に連携することになる。たとえば福岡で行われている樋井川流域治水市民会議では、3つの大学、複数のNPO法人、県、市、企業、地域住民などが連携し、それぞれの団体が優劣なく、公平な立場で運営がなされている。既成の1団体が中心になるのではなく、ある意味で共働体制であり、中心のない組織として運営されている。この仕組みはとても良いというのが実感である。

  • スピード感・動いているという実感
    プロジェクトに参加する人は、プロジェクトが動いているという実感を感じることができることがとても重要である。そのためには、常に何かが具体的に動いていることが重要であり、そういう意味ではスピード感はキーワードである。

  • チームで仕事をするからチームワーク
    チームワークの文字の通り。なにかのプロジェクトを実施する過程でチームワークが形成される。チームワークが形成されるようなチーム運営が重要。話しやすい、フラット、暖かい、楽しいなどが、キーワード。

  • ネットワークはネットで(つながって)仕事をするからネットワーク
    同様に、いろいろな人や組織が網の目のようにつながり、プロジェクトを実行する。つながっただけでは、単なるネット。せっかくネットができたなら、何かしよう。


     

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