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グリーンインフラとは

 

グリーンインフラは「自然力や自然の仕組みを賢く活用することで社会と経済に寄与する国土形成手法をグリーンインフラと定義し、人口減少社会における国土の劣化を防ぎ、さらに豊かな国土の形成を図る」(グリーンインフラ研究会)、あるいは「自然生態系の価値と機能を保全する空間をネットワークとして連結させ、自然の機能が提供する恩恵を人類が享受するシステム」(EUの定義から)などと定義される。すなわち、生態系を社会的なストックとして捉え、生態系が有する多面的な生態系サービスを社会が持続的に享受可能なストックとして活用するという新しい国土マネジメントの概念と手法である。

このグリーンインフラは2000年後半より、欧米で始まり、ヨーロッパでは地球温暖化適応策あるいは生物多様性の保全のために、アメリカではStorm Water Management(都市の雨水管理)のために用いられようとしている。グリーンインフラの要素としては、湿地、海岸林、自然公園、緑道、屋上緑化、雨水植栽ます、有機農業、自然豊かな河川、ビオトープなどの自然的あるいは半自然的空間があげられる。これらのグリーンインフラの要素が連結することによって、大きな価値を生む。

グリーンインフラは多面的な価値や機能を持ち、持続可能なため、さまざまな課題解決ツールとして期待されている。

特に災害分野ではグリーンインフラの一つである生態系を活用したDRR(disaster risk reduction)すなわちEco-DRRが国際的に注目されている。Eco-DRRは、人工物による対策に比べ、費用が一般的に安価である。さらに生態系は多面的な価値を持ち、平常時には人類に生態系からの恵みを提供してくれる。このため世界中で生態系を活用したEco-DRR が注目され、試行されるようになっている。Eco-DRRによってすべての災害を防ぐことはできないが、工学技術やソフト対策との組み合わせにより、さらに効果的になりうる。工学技術と組み合わせた、ハイブリッドなEco-DRRは極めて有効な手法として期待されるが、Eco-DRRは工学者にはなじみが薄い視点であり世界的に研究が遅れている。

都市域では、都市化と豪雨による水害の頻発、水質悪化、大地震後の生活用水困窮、ヒートアイランド現象、コンクリート化による都市環境の劣化など様々な水問題、環境問題がある。New Yorkなどの米国の大都市では雨水管理を緑地への浸透、貯留を活用したグリーンインフラへと転換した。コストが安価で導入までの時間が短く、住環境も改善されるためである。我が国では、雨水管理の問題に加え、震災時の生活用水困窮の深刻な問題がある。公園、体育館、住宅に雨水貯留などのグリーンインフラを活用することにより、これらを同時に解決できる可能性がある。さらに、都市は深刻なヒートアイランド現象が発生している。ヒートアイランドは蒸発散量の減少が主因であり、都市の水辺や緑の再生が重要である。不動産分野では単純な「経済性」だけではなく、「環境、社会への配慮」を併せ持つ不動産――Green Building を供給する事業者の先駆的な取り組みが進みつつある。このように、都市においてさまざまな防災、環境上の課題があるが多様な機能を持つグリーンインフラにより解決される可能性は高い。しかしながら、グリーンインフラが都市政策として計画的に組み立てられるには至っていない。

地方都市、農村、中山間地、山地を包含する流域は人口減少に伴う獣害、それに伴う山地の劣化、豪雨時の河岸沿いの人工林の流木化、ダムや砂防ダムによる河川分断、土砂供給量の減少、海岸環境の劣化、水産資源の減少、生物多様性の危機など多様な課題が存在する。これらを包括的に解決させるためには、流域の基盤である環境を整え、地域資源に基づいた産業を起こし、それらを運用する主体を形成する必要がある。健全な生態系の維持は持続的な地域社会の発展のために必須であり、生態系の機能を発揮させるグリーンインフラがその主役を演じる。

グリーンインフラの基本的な考え方について簡単に説明する。グリーンインフラは生態系サービスがもたらす多面的な機能を有している。グリーンインフラの構成要素を連結させ、多面的な機能を発揮させ社会的なストックとして機能させようという考え方である。すなわち様々な水や緑の空間を適正に保全、管理、活用し、インフラとして機能させるものである。

    都市域、農山村を含めて、質の高い緑や水の空間をグリーンインフラの要素としている。これらの空間が連結することによって、グリーンインフラとしての機能を発揮する。再生可能エネルギーも含まれることは重要である。

 グリーンインフラとグレーインフラにはそれぞれ特徴があり、どちらがすぐれているかというものではない。グリーンインフラは自然が豊か、多機能、環境負荷が小さい、維持管理コストが安い、規模拡大コストは面積拡大だけで済む、持続可能であるなどの利点がある反面、関係者が多数で参加型の取り組みが必要、標準化が困難である、大きな敷地が必要などの課題がある。一方、グレーインフラは標準化が可能、効果発揮までの時間が短い、小さな敷地で済むなどの特徴がある反面、単機能である、維持管理費が高い、規模拡大時にはシステム全体の作り替えが必要である、減価償却費が必要などの課題がある。 したがって、グリーンインフラとグレーインフラの組み合わせが重要である。またグリーンインフラとグレーインフラとは連続的であり、完全にグリーンインフラ、完全にグレーインフラというものは多くない。

 分野横断の取り組みであり、各セクターの連携および学の連携が必要な分野である。

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