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分散型の雨水管理(2)

治水のことについて考えてみたい。先ほどの続きで、60坪(200㎡)の敷地に時間雨量100㎜の雨が降った場合、敷地全体に均等であればたった10㎝の深さにしかならない。しかし量的には20㎥の雨が降ったことになる。現在都市の雨水排水は下水道設備が担っているので、庭に浸透しない雨はすべて下水管に流れ込む。これらが集まって管の容量を超えるとマンホールから水が噴き出し、洪水になる。これが都市水害である。これが不可視の問題でもある。

 一方、土の浸透能を見るとその状況によって大きく異なる。時間雨量100㎜とは大変な豪雨であるが、水の高さで言えばわずか10㎝である。想像すればわかることであるが、フカフカの土は空隙が大きく、水を良く吸い込み、30cmもその土壌があれば10cmぐらいの水は容易に吸収することが想像できる。

 研究の分野では、最終浸透能という概念が使われる。これは同じ土壌が深く続いたときにどれぐらい水を吸い続けるのかという値である。乾いた土には初期はどんどん水が浸透するが徐々にその値は小さくなり、ある一定の値に落ち着く。専門的になるがそれは土の透水係数の値とおなじになる。

 これまでの研究例をあげると、締め固められた土(たとえばグランド)では1時間にたった7mm、福岡のような花崗岩地帯では1時間20mm、関東ロームでは1時間に100mm以上、土壌では草地で100mm、畑や樹林地は200mmていどと言われている。

 このことから言えることは同じ土と言ってもグランドなどはほとんど浸透せず、ほぼすべての雨が流出し、ふかふかの畑などの良好な土壌は1時間200㎜もの雨を浸透させ、表面流出は生じないということである。土を締め固めることは流出を増大させることである。アメリカでは家を建築するときに庭などの場所は重機が入らないように工夫している。良好な緑と土を増やすことが、都市の洪水対策としてはかなり有効な手法である。

 山地のような基盤までの深さがあまり大きくない斜面であれば行ったん浸透した水が、滲み出てくるので話がさらにややこしいが、平らな場所ではこの地表の状態によって流出現象は決まるのである。

 60坪の家のうち、30%程度は庭があるだろうから、そこを手入れの行き届いた庭にするだけで20-30%の流出抑制ができることになる。樋のうちいくつかを切って、甕などにためて、日常的あるいは地震時などに利用し、あふれる水を庭に流し雨庭にすれば大きな洪水抑制になる。

 分散型のあまみず社会というのはそれほど難しいことではない。


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